「経営マインドの欠如」

加藤治彦

 カルロス・ゴーンが日産自動車に来てビックリしたことが、2つあると言われる。
 ひとつは、社員の優秀さである。ミシュランやルノーといった世界の優良企業で勤めてきたゴーンですら、ビックリしたのが確実に仕事をこなす社員の存在。改善についてもしっかりとこなす。
 一方でもっとビックリしたのが、経営マインドのなさである。2兆円を超える負債を抱え、将来への不安が巷で噂されているにもかかわらず、多くの社員はそれほど動揺していないのだ。ゴーンの常識からすれば、転職などを考える社員であふれているはずなのに、平常心で勤務する。「赤信号、皆でわたれば怖くない」といった心境なのだ。
 人生は一度だけである。そして人生という企業の社長は自分だけである。会社に勤めていても、人生という観点ではオーナー企業の経営者と考える。企業業績が悪いのに、やめない。ゴーンが日産自動車に最も欠けていると感じたのは、オーナー意識の欠如である。これが経営マインドの真の意味である。優秀な能力を持つ人間も経営マインドが欠けているようでは時代の変化を乗り越えられない。