「美しい数式」

野瀬純郎

 人間は数える必要性から数というものを考え出し、やがて単純に数えるということから離れて、抽象的な概念を発展させてきました。自然数、整数、有理数、無理数、実数、虚数、複素数・・・。それとともに演算や記数法が整い、それらを一定の規則に従って結合した文字列、すなわち数式が現れました。
 数式には面白いもの、奇怪なもの、難解なものなど、それこそ数限りなくありますが、そのなかでも最も簡潔で美しいのは次のオイラーの公式でしょう。
   
 数学の5つの基本的な定数1、0、e、π、iをそれぞれひとつずつ含んでいます。しかも、それらは3つの最も大切な数学の演算である加法、乗法、累乗で結びつけられています。また、これら5つの定数は古典的数学の4つの分野を象徴しているのです。すなわち、1と0は算術、eは解析学、πは幾何学、iは代数学の代表選手というわけです。この式に一体どういう意味があるのかまったく理解できませんが、何かの働きを感じざるを得ません。
 それにしても数の世界は実に不思議に満ち溢れています。人間が頭の中で考え出したものには違いないのでしょうが、さまざまな不思議はとても人間の頭では捉え切れないように思えます。
 たとえば次のような数は如何でしょうか。
   1×8+1=9
  12×8+2=98
 123×8+3=987
   ・・・・・・
 123456789×8+9=987654321
 あるいはこんなものもあります。
   
 さらには、666はヨハネの黙示録に出てくる獣の数ですが、最初の7つの素数の平方を足したものであり、πの最初の144桁((6+6)×(6+6))の数字の和である、というのもあります。
 ここまでくると何となく無理矢理に探し出してきた感じがしないでもありませんが、フランスの著名な数学者アラン・コンヌの「不変で生の数学的実在は、人間の精神とは独立に存在する。」という言葉は素直に受け入れられます。
 暑い日々が続きますが、一服の清涼剤になったでしょうか。